砂浜に描いたうたかたの夢
下がった眉尻と悲しみの色で埋め尽くされた瞳。
それは、昨日よりも酷く、濃く。

顔と耳以上に赤い色に潤んだ目は、今にも涙がこぼれ落ちてしまいそうだった。



「でも……怖いよ……っ」

「だよな。怖いよな。でもね一花」



細長い指先でそっと涙を拭うと、コツンとおでこをくっつけてきて。



「いなくなったら、喧嘩することも、笑い合うことも、一緒にご飯を食べることも、こうやって触れ合うこともできなくなるんだよ」



目を瞑ったまま。1つ1つ言い聞かせるように。

私に向けられた言葉だけど、なぜか凪くん自身に言い聞かせているようにも捉えられた。



「お願い一花、仲直りして。怖いのは分かる。けど、ここで逃げたら絶対後悔するから」



額を離した彼は、真っ直ぐな眼差しで強く言い放った。


ズルいね凪くんは。また年上の権力を振りかざしてきたね。

呼び捨てで命令されたら……もう「はい」以外選べなくなるじゃない。



「……また、会える?」

「うん」

「本当に? 画面越しじゃないよ? 3次元でだよ?」

「会えるよ。約束する」
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