砂浜に描いたうたかたの夢
田舎とはいえども家の敷地外。いつ危険と出くわしてもおかしくない。

無我夢中で追っていたらいつの間にか海岸にたどり着いていて。倒れている私を発見し、智のスマホで連絡したのだという。


なぜジョニーが突然走り出したのか。海に向かったのか。

謎だらけだけど……現時点で分かったのは、凪くんは私を岸まで運んだ後、姿を消したのだということ。



「他に人はいなかったの?」

「いなかったよ。ライフセーバーの人は来てなかったから、お父さんと智くんとジョニーだけだった」

「本当に? 若くて綺麗な男の人、見てない?」



でも、そんなはずはない。瀕死状態の私を置いて帰るだなんて、凪くんに限って絶対あり得ない。

だって凪くんは水泳部。水難事故については部活動でも教習してるだろうし、人一倍詳しいに決まってる。


ファンの心を弄ぶちょっぴり悪い男だけれど、死にかけの人間を放ったらかしにするような人間ではない。

それに根っからの極悪人なら、最初から私を助けず見捨てていたはずだ。
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