砂浜に描いたうたかたの夢
「若くて綺麗? 具体的にどんな?」

「細身で全体的にクールな顔立ちで、でも笑った時の顔は柔和で、ふとした時の目が憂いを帯びている時があって……」

「にゅう、わ……? う、れい……?」



眉間にシワを寄せて首を傾げている。



「王子様みたいな大人っぽい人だったんたけど……」



特徴を並べるも、ピンときていない様子だったのでシンプルにまとめた。



「いや……そんな少女漫画のヒーローみたいな人はいなかったぞ。そもそも、海にいたのはお父さん達と隊員の人だけで、野次馬もいなかったから」

「嘘……」



きっぱりと、最初からいなかったと言い切られた。その直後、恐ろしい考えが頭をよぎる。


まさか、私を助けた後、力尽きた……?

いや、ちょっと待って。砂浜に倒れていたのなら、確実に陸に上がっている。

……でも、力尽きて倒れた場所が、浅瀬だったら……波に呑まれて流されたって可能性も……。


認めたくないけど、仮にそうだとするならば……私が見ていた幸せな夢は、本当は夢じゃなくて、凪くんの──。



「失礼しまーす」
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