砂浜に描いたうたかたの夢
「ただいま」

「おかえり。パンフレット、届いてるわよ」

「ん」



フライパンを洗う母に短く返答し、視線をたどる。

ダイニングテーブルの上に用意された和食セット。そのすぐ隣に、A4サイズの封筒が低い山を作っている。


……今日は2校か。



「それで、あといくつ届くの?」



シンクから流れ出る水が止まり、同時にスクールバッグに封筒をしまう手も止まる。



「いくつって、何が」

「パンフレットに決まってるでしょう。今月に入ってから毎日のように届いて……あなたいくつ注文してるの」



耳に飛んでくる声に顔をしかめつつ、封筒をしまう。



「家族が家にいるからって、いつでも受け取れるわけじゃないんだから。お母さんもおじいちゃんも忙しいのよ」

「うるせーな」



最後の1つを乱暴に突っ込み、ドアに八つ当たりするようにして部屋を出た。


マジあり得ない。帰ってきて即説教って。

こっちは部活終わりで疲れてるというのに。俺だって受験生なんだから忙しいんだよ。
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