砂浜に描いたうたかたの夢
2回往復し、100メートルを泳ぎきった。



「どうだった?」

「……あの、先輩、最近どこか具合悪いんですか?」



近寄ってゴーグルを外すと、怪訝そうな顔でストップウォッチを見る後輩の姿が。



「いや? 雨で気分は下がり気味だけど、体調面は特に何も。そんなに悪かった?」

「……前回よりも、下がってます」



見せてくれた画面には、一昨日よりも5秒以上遅れた数字が表示されていた。


嘘だろ……なんで? 計測ミスじゃないよな?
普段通り泳いだのに、自己ベストの10秒近くも下回ってるなんて……。


突きつけられた現実。頭を鈍器で殴られたような感覚がした。







「お前、何かあった?」

「えっ?」



駐輪場を出て校門に向かう途中、理桜が顔色をうかがうように尋ねてきた。部活終わりに合流したため、一緒に帰ることになったのだ。



「最近、ふと見たらボーッとしてる時が多いからさ。珍しいなと思って」
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