砂浜に描いたうたかたの夢
並べられた正論に声をしぼませて返事をした。

ですよね。ついカッとなって口走ってしまったけれど、まずは「こんにちは」、そして「運んでくれてありがとう」だよね。

再会して早々失礼だったなと反省し、後部座席に乗り込んだ。







話に花を咲かせながら街を抜け、木や田んぼに囲まれた道を走ること数十分。



「あ! 海だ!」



太陽の光に反射してキラキラと輝く海が見えた。

その美しさに取り憑かれたかのように、窓に顔を近づける。

15年強の人生で、海には何度か行ったことはあったけど、こんなに綺麗な海は初めて見た。



「そんなに張りつく? 一花の地元って海ないの?」

「あるよ。でも、街中に住んでて距離あるから、智みたいに気軽に行けなくて」

「うわぁ、サラッと都会自慢ですか」



……こいつ、さっきからなんなの?

学校の話をしても、世間話をしても、言葉の端々に棘を感じる。セミの件で怒ったこと、まだ根に持ってるとか?

サイドミラーに映った顔がものすごく腹立つ。けど、言い返したらより嫌味が増しそうだしな……。
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