砂浜に描いたうたかたの夢
「こら智。八つ当たりしない。ごめんね一花ちゃん。この子、最近彼女と喧嘩したみたいで、ご機嫌ななめなのよ」

「バカ……っ! 勝手に教えんなよ!」



すると、出発前からやり取りを見ていた伯母が説明をしてくれた。


彼女って……あんたもリア充だったのかよ!

はぁ、どうしてこんな意地悪なやつに恋人がいて、毎日コツコツ勉強を頑張ってる私にはいないんだろう。

……まぁ、人のことをこんなやつって言う自分も、決して性格がいいわけではないけどさ。


住宅街に入り、右左折をしながら奥へ進むと、瓦屋根の大きな平屋が見えてきた。

どうやらあれが曾祖母の家なのだそう。


駐車場に車を停めて荷物を運び出し、インターホンを押した。



「お母さん、お父さん、来たよ」

「はいはーい。今開けるからちょっと待ってて」



インターホンのカメラに向かって伯母さんが話しかけた。

声のトーンからすると、おばあちゃんかな?

しばらくして曇りガラスに人影が現れ、ガラガラガラとゆっくり扉が開いた。
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