砂浜に描いたうたかたの夢
「凪っ、待って!」



サドルに跨がり、ペダルを踏もうとした瞬間、玄関のドアが開いて母が出てきた。



「これ、お弁当」

「いいよ、コンビニでパン買って食べるから」

「パン⁉ ダメよ! 成長期なんだから、ちゃんとバランス良く食べなさい」



差し出されたオレンジ色の巾着袋を押し返すも、そこはさすが親子。少々乱暴にかごに突っ込んできた。



「……分かったよ」

「ひいおばあちゃん達に失礼のないようにね」

「ん」

「こまめに水分補給するのよ? 今日も30度超えるみたいだから」

「……ん」

「あと、日が長いからって、あまり長居しちゃダメだからね。遅くならないうちに帰ること。明日体験入学なんだから……」

「あぁもううるせーな! いちいち言われなくたって分かってるよ!」



長々と口出ししてくる母を一蹴して家を飛び出した。
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