砂浜に描いたうたかたの夢
あっかんべーと舌を出し、海岸に逃走。

理桜め……これじゃ写真撮れねーじゃねーか。


はぁーと長い溜め息をつき、全部塗り終えたところで腰を上げて海岸へ。

桃士と鋼太郎には悪いけど、写真が撮れないならかなり時間持て余すだろうし。

「スケッチしてくる」と伝えて、単独行動することに。


人気のない場所に向かい、地べたに座ってスケッチブックに鉛筆を走らせる。

水分補給も取りつつ、描き写すこと1時間半。


──ブーッ、ブーッ。


ポケットに入れたスマホが振動し始めた。

あいつ、マナーモードにまでしやがったのか……。


いたずら好きな友人に呆れながら、鋼太郎からの電話に出た。



「はいもしもし」

【浅浜っ! 早く来てくれ! さくっ……佐倉が──】



────
──



「鋼太郎!」

「浅浜! こっち!」



血相を変えて手を振る鋼太郎の元へ全速力で走る。



「理桜‼ 聞こえるか⁉ 理桜‼」



海面で浮き沈みする理桜に大声で呼びかけた。
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