砂浜に描いたうたかたの夢
「ありがとう! おじいちゃんもおばあちゃんも、みんな大好き!」

「はははっ、ありがとう」

「うふふ、おばあちゃんも大好きよ」

「……チョロっ」



嬉しさのあまり、湧き上がってきた思いが溢れて自然と口が動いた。


まだ来て数時間しか経ってないけど、帰省して良かった。
充分気分転換できそうだし、勉強もはかどりそうだ。


ボソッと呟いた智を無視して、もらった唐揚げをじっくり味わった。







大好物を食べてエネルギーが満タンになったところで、夏休みの宿題に取り組む。


持ってきたのは、英語と化学のプリントと、自由研究用のメモ帳とノート。そして日記帳。

静かな環境を活かして、一気に進める作戦だ。


祖父母の部屋を借り、ちゃぶ台の上に宿題を広げた。髪の毛をお団子にまとめ、前髪も留め直す。

晩ご飯の準備時間まで、あと3時間弱。まずは英語から始めるか。


──ガチャッ。



「あ、いたいた」



気合いを入れた直後、突然ドアが開き、宿題を抱えた智が現れた。
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