砂浜に描いたうたかたの夢
脳内でイメージを膨らませていると、ふと昨夜の出来事を思い出した。



「ねぇ、この近くに、若くて綺麗な男の人って住んでない?」

「ん? 綺麗? どんな感じの?」

「えっとね……」



記憶をたどり、抱いた特徴を並べる。

細身の体型に涼し気な目元、上品かつ落ち着いた雰囲気。例えるなら、月夜に輝く王子様。

話し方が丁寧だったから、恐らく年齢は私より上。20代前半かなと予想している。



「どう? 心当たりある人いる?」

「うーん。そもそも、この辺りは若者が少ないからなぁ。それだけハンサムな人なら、一目見たら覚えてるはずなんだが……」

「そっか……」



毎日周辺を散歩している祖父でさえも、知らないのだそう。

言われてみれば、ご近所さんも年配の人ばかりだったもんな。



「捜しているということは、何かあったのかい?」

「あー……」



しまった、情報欲しさについ……。

誤魔化そうとすればするほど不信感は増幅し、隠そうとすればするほど知りたくなるもの。
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