砂浜に描いたうたかたの夢
この流れだと気になるのも当然だから、正直に話してしまおう。お父さんに話がいって、後で何か言われたら嫌だし。

余計な心配をかけまいと、包み隠さず全て話した。



「ごめんね。智は何も悪くないから、責めないであげて」

「いやいや。無事ならいいんだよ。もしかしたら、一花ちゃんみたいに帰省してる人かもしれないねぇ。学生さんなら、ちょうど夏休みだろうし」



予想を含んだ返答に、腑に落ちたように頷いた。


帰省中の学生か。それなら普段見かけないはずだよね。

昨日で帰ってしまっているなら難しいけれど……もし近所に泊まりに来ているのなら。

もう1回会って、改めて謝罪がしたい。


また会えますように。

そう願いながら帰宅し、祖母と伯母と一緒に朝食の準備に取りかかった。







「あら? おでかけ?」

「うん。ちょっと海に行ってくる」



数時間後の昼下がり。玄関で靴を履いていると、祖母が声をかけてきた。



「海? 海水浴?」

「ううん。絵日記のネタ用に、写真を撮りに行くの」

「あぁ! 宿題ね! 外、日射しが強いから気をつけてね」

「はーい!」
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