砂浜に描いたうたかたの夢
波打ち際から奥にかけて色鮮やかなグラデーション。太陽光に反射して煌めく海面は、まるで散らばったダイヤモンドが輝いているかのよう。



「ヤッホー!」



その美しさに魅了され、感情が高ぶった私は、人目もはばからず叫んだ。

いやいや、ここ、山じゃなくて海だから。叫んでも返ってこないから。


周囲はそう言わんばかりに目を向けているけれど、気にせず海岸に下りる。

夏休み中というのもあり、家族連れやサーフボードを持った男性などで賑わいを見せていた。


パラソルやテントの立つ砂浜を通り過ぎて人気(ひとけ)のない場所へ移動。

ひとしきり写真を撮った後。



「ひゃー! 冷たっ!」



靴を脱いで裸足になり、波に当たる。

部屋着だから、ジョニーみたいに全身とはまではいかないけど、ひんやりして気持ちいい。水着も持ってくれば良かったな。



「今日はお1人ですか?」

「はい?」



浅瀬ではしゃいでいると、黒い日傘を差した男の人に声をかけられた。



「楽しんでるところ突然すみません。僕、昨夜ここで声をかけた者なんですけど……覚えてますか?」
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