砂浜に描いたうたかたの夢
彼の口から出た単語にきょとんとする。

か、彼氏? 一体誰のこ……。



「……あ、彼氏って、迎えに来た人のことですか? あの人はただの従兄です」

「えっ、従兄?」

「はい。別行動してたのは、彼女と電話してたので、邪魔にならないように離れてただけなんです」

「なんだ、良かったぁ」



説明すると、今度はお兄さんが安堵の声を漏らした。


智が彼氏だなんて、身内じゃなかったとしても、地球がひっくり返っても絶対無理だけど、傍から見たら男女2人組。カップルかなと思うのは自然なこと。

もしかしたら、ややこしくならないように配慮して姿を消したのかもしれない。



「従兄ってことは、帰省中?」

「はいっ。夏休みなので」

「なら、学生さん?」

「そうです。高校生です」

「えっ、奇遇ですね。僕も高校生なんです」

「ええっ⁉」



波の音だけが聞こえる閑静な海岸で驚きの声を上げた。

若くても大学生くらいかなと思ってたら、高校生だって⁉
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