初恋の人
 しばらく黙り込んでいた康史は大きな溜め息を吐き、半ば呆れたような表情を見せた。

「そんなこと言う奴いないだろ。……結愛をそんな風にしてしまったのは、俺のせいなのかな」

 康史は微苦笑しながら続けた。

「彼女とはあの後すぐに別れたよ。自立したしっかりとした女性でね、彼女には俺は必要ないと思ったんだ。一人で何でも出来る人だったからね」

「私には康ちゃんが必要だよ……」

「勿論、俺も大切に思ってる。結愛はかけがえのない存在だよ」

「……うん」

 康史がそう言うであろうことはわかっていた。

「結愛? 俺がもし結愛と一緒になったら、絶対に結愛を手離すことはないよ。今さら、結愛のどんなことを知ったって嫌いになるなんてことはないから。ただ、俺は結愛が幸せになるのをどうしても見届けたいんだ。言ってる意味、わかるかい?」

 結愛は小首を傾げた。

「俺と結愛が一緒になるってことは、何があっても絶対に別れることが出来ないってことなんだよ。やっぱり無理でした、では済まないんだ。もしも別れることになった時は、もう元の関係には戻れないだろうし、二度と会えなくなるかもしれない。それは絶対に困るんだ。結愛にそこまでの覚悟があるかい?」

 結愛は涙を堪え、はっきりと答えた。

「勿論。それが、ずっと私の望んでいたことだから」

 結愛はバッグの中からポーチを取り出すと、中に入っていた小さな紙袋の中身を丁寧に取り出した。
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