絶対的恋愛境界線〜当て馬だってハピエン希望です!〜
「だから私にもまだチャンスはあるかなって思ってるの。だって付き合ってなければ、気持ちが変わることだってあると思うし」
「……小野寺さんって、想像以上に強いんだね」
そう言って信久はビールを飲み干すと、どこか寂しそうに笑った。
「というか、強くないとやっていけないじゃない。両片思いの人に恋をするって、本当はかなり無謀なことだってわかってるし」
「あはは。なんか小野寺さんのこと誤解してたかも。本当はめちゃくちゃ強い女性だった」
「松重さんももっと強くなって、長崎さんを彼女にするくらい頑張ってよ。そうしたら私が笹原さんにアタック出来るから」
「俺、小野寺さんみたいに強くないんだよ」
男の人とする会話ってこういう感じなのねぇ。徳香は信久との会話を楽しく感じていた。
幼稚園にいるのは女性の先生ばかりだし、園児の男の子と話す会話は"戦隊モノ"か"電車"の話がテッパンだった。
「ねぇ、松重さんと私って同い年だったよね」
「今年二十五?」
「うん」
「じゃあ同じだ」
「だからさ、こうやってお近付きになれたわけだし、良かったら名前で呼び合わない? 友だちになろうよ」
しかし信久はあまり良い顔をしなかった。
「……名前、二人の時だけなら」
信久の言いたいことがわかり、徳香は納得する。突然同い年の二人が名前で呼び合ったりしたら、何かあったと見られて誤解を生むに違いない。お互いの片想いにも悪い影響を与えかねないだろう。
「確かにそうね。じゃあ二人の時だけ。それ以外は苗字で呼ぶよ」
「賛成」
そしてこの日から二人の秘密の関係がスタートした。