絶対的恋愛境界線〜当て馬だってハピエン希望です!〜
二人はお互いを探るように見つめ合うと、先に信久が口を開いた。
「……長崎さんは、会社が同じなんだ。よく社食で会うんだけど、笑顔が可愛いなぁって思ってた。だから彼女が入ってるっていうサークルに参加したんだ」
肩肘をついて静かに語る信久の声に、徳香はただ耳を傾けていた。
「でもさ、話す機会は増えたけど、それ以上に進展はしないんだよ」
「でも好きなんでしょ?」
「たぶん」
「彼女にした〜い! とかないの?」
「まだそこまで仲良く慣れてないし、俺の気持ちもまだ追いついていない感じかな」
「ふーん、そうなんだ……」
信久は徳香に向かって顎をクイっと向ける。まるで『次はそっちの番』とでも言っているかのようだ。
徳香は同じように肩肘をつくと、目線だけ下に向ける。
「私はサークルに入ってから、カッコいいな〜って思ったのが笹原さんで、気付いたら好きになっちゃっていただけ。でも……」
徳香は信久の目を見る。
「笹原さんと長崎さんって、両片思いだよね。お互いのことを好きなくせして、どちらも踏み出せずにいる」
信久は微動だにしない。ということは、彼自身も気付いているのだろう。