絶対的恋愛境界線〜当て馬だってハピエン希望です!〜
* * * *

 足利織姫神社についてスマホで調べていた徳香は、気になるものを見つけた。

「へぇ。足利織姫神社って恋人の聖地で、縁結びの御利益があるんだって! これは絶対に行かないとだね!」
「そうなんだ」
「社殿の近くに駐車場はあるんだけど、下から昇ればもっと御利益があるみたい。二百二十九段の石段の男坂か、七色の鳥居を抜ける女坂か」
「せっかくだし、鳥居をくぐってみる? あぁ、でも体力使いそうだな」
「明日も休みでしょ? 何のためにバスケやってるの。行ってみようよ!」
「いや、俺はバスケやってないし」
「口ごたえしないの!」

 徳香に言われるがまま、女坂の近くの駐車場に停めると、二人は荷物を持って歩き出した。

 男坂の階段と違い、女坂は山道に近い。それでも徳香はやる気満々だった。

「カラフルでかわいいねぇ」

 七色の鳥居をくぐりながら、徳香は歓喜の声をあげる。しかしやはり悪路に苦戦し、少しずつ息も上がってくる。

 信久は振り返ると、徳香にそっと手を差し出した。

「繋いでく? 何なら引っ張ってあげてもいいよ」
「やった! 持つべきものは友達だね!」
「はいはい、友達ね……」

 手を繋いで社殿のある場所まで登りきるが、信久は手を離そうとはしなかった。

 離すの忘れてる? まぁいっか。幼稚園でも子どもと手を繋ぐのは慣れてるしーー信久が異性であることはわかっていても、どこか仕事の延長のような気持ちになる。

 手水舎を前にしてようやく手が離れ、それぞれ手を洗った。社殿に向かう階段を登り始めると、徳香は嬉しそうに声を上げる。

「この階段! あの映画に出て来たところだよね!」
「本当だ。確かにあのシーンだ」

 二人は朱色の美しい社殿の前に立ち、手を合わせてお参りをする。

 徳香は修司の名前は唱えなかった。好きな人がいつか私を好きになってくれたらこんなに嬉しいことはない。でもそんな日が来ないことはわかってる。

 今すぐ諦めるわけではないけど、いつか自分だけを愛してくれる人と出会いたい……報われない恋をしていると、そんな願いを抱いてしまうのが本音だった。
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