絶対的恋愛境界線〜当て馬だってハピエン希望です!〜
お参りを終えて歩き出した二人の前に『恋人の鐘』が現れた。
「こういう鐘って、『恋人の聖地』には必ずあるよね」
「やったことある?」
「昔ね。あまり意味なかったけど」
「まさか……元カレ……とか?」
「うん」
そう徳香が呟くと、信久は急に立ち止まり、口を手で押さえて下を向く。
「どうしたの?」
信久の顔を覗き込むように見上げた徳香は、突然手を掴まれ恋人の鐘のところまで引っ張られていく。
「の、信久?」
「せっかくだからさ、やろうよ」
すると徳香は怪訝そうな表情を浮かべる。
「……なんで私と信久が?」
「あっ、やっ、だからっ……ほらっ、お互いの恋の成就を願って! 二人なら御利益も倍増しそうじゃない?」
いつになく必死な信久を見て、彼の願いの強さを感じる。
そんなに長崎さんのことを想っているんだ……私も何か協力出来ればいいのにと思うけど、今は二人の幸せを願うしか出来ない。
「そうだね。じゃあ二人分の願いを叶えてもらおう」
二人は鐘の下に立つと、互い違いにロープを掴み、そっと鐘を鳴らす。高い鐘の音が響き渡っていく。
「長崎さんと信久が近付けるように、私も何か手伝うから言ってね!」
意気揚々と話す徳香に対し、信久は口ごもりながらか固まった。何か言いたそうにしているが、何も言わずに俯く。
言いたいことがあるのだろうか。でも言いたくなるまでは聞かない方がいいかなーー振り返ると、山の上にある社殿からは素晴らしい景色が見え、徳香は再び感嘆の声をあげた。
「すごーい! 高いねえ」
「本当……キレイだな……」
「あっ、ねぇ、さっきお蕎麦屋さんがあったよね。お昼食べようよ」
「う、うん、そうしよう」
一歩後ろを歩く信久を気にかけながらも、徳香は深掘りはしないように歩みを進める。