絶対的恋愛境界線〜当て馬だってハピエン希望です!〜
すると雪乃は荷物を持って立ち上がる。
「じゃあ私は帰るね」
「うん、また今度ね」
「松重くん、この子お酒に弱いから、程々にしないと大変だよ」
「わかりました」
雪乃の背中を見送りながら、徳香は不貞腐れたように膝を抱えて頬を膨らませた。
「私なんか放って、長崎さんのところに行けばいいじゃない」
「……あの状況で、どうやって行けって言うんだよ。徳香だって行けないから不貞腐れてんでしょ?」
「あぁ、そっか」
杏と修司は同じ仲間たちと賑やかに飲んでいる。つまり、二人は同じ状況下にあるということだった。
ようやくそのことを理解した徳香は、下を向いてスカートに向かって吹き出す。
「そっか。私たちって一緒なんだね」
「そういうこと。どうする? このまま状況が変わらないなら、徳香が酔ったって理由つけて帰ってもいいけど」
信久に言われ、徳香はしばらく考える。もし話すタイミングが来たとしても、この酔った頭ではちゃんと話すことは無理かもしれない。
膝に顎を乗せて信久の目をじっと見つめると、彼は困ったように笑った。
なんか私、最近信久に甘えてばかりいる。でも彼の好意はありがたかった。
「……もう帰りたいかも」
「うん、実は俺も帰りたかった。だから徳香はも同じで助かったよ。じゃあちょっと待ってて」
彼の手が徳香の頭を撫でると、修司たちのいるグループの方へ歩き出す。
「小野寺さんが飲み過ぎたみたいなので送っていきますね」
「おまっ……まさか小野寺さんを……⁉︎」
「路線が同じだけです。じゃあ俺たちはこれで失礼します」
話を終えて信久が戻ってくると、修司が心配そうに声をかけてきた。
「小野寺さん、大丈夫?」
「あっ、すみません。久しぶりに飲んだから、酔いが回るのが早かったみたいです」
「そうか、お大事にね」
「ありがとうございます」
そしてまた会話に戻っていく。所詮私はこの程度。わかっていても悲しくなった。
信久は徳香の荷物を全部持つと、スッと手を差し出す。徳香はその手を取ると立ち上がった。
「荷物ってこれだけ?」
「うん」
宴会場を後にした時、信久がいてくれて良かったと勝手に思ってしまった。一人だったら、我慢できずに泣いてしまったかもしれない。
駅までの道中、彼が繋いでくれた手がとても温かかった。