絶対的恋愛境界線〜当て馬だってハピエン希望です!〜

 すると信久が顔を輝かせて徳香の方を見る。

「いいこと思いついた。徳香さ、俺の練習台になってよ」
「……はぁっ? 言ってる意味が全く理解できないんだけど」
「だからさ、こうやって手を繋いだり、腕を組んだり、リハビリさせてほしいんだ。徳香だって俺からアドバイスをもらえたら助かるんじゃない? 男はこういう仕草が好きとかさ」
「そ、それは……確かに助かるかも……だけど……」

 職場には女だけ、姉妹も姉二人、色恋沙汰を相談出来る相手などいなかった。

「でもさ、好きな人との初めてのときめきを大事にしたいとも思わない? 私じゃなくて、長崎さんと経験した方が嬉しさ倍増じゃない?」
「失敗するよりは、練習しておきたいな。徳香は笹原さんとのために"ときめき"をとっておきたいの? というか、まさか俺にときめく予定?」

 ニヤニヤしている信久に言われて、驚きの余り飛び跳ねた。少しだけ信久を男性として意識したことが恥ずかしくて、熱くなった頬が溶けてしまいそうになる。

「な、そんなわけないじゃない! わかった。いいよ。信久のリハビリを手伝ってあげる。でも! キスとかはしないからね」

 必死になって言ったが、信久の方が顔をしかめる。

「何当たり前のこと言ってるんだよ。それこそ長崎さんとのために取っておきたいんだけど。逆に徳香の方こそ、俺にムラムラして襲ったりしないでよ」
「す、するわけないじゃない! もう、どーんとぶつかってきなさい! 私がリハビリの相手をしてあげるから!」
「おぉ、頼もしい」

 腰に手を当て、胸を張って言い切った徳香を、信久はまるで何か企んでいるような瞳で見ていた。
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