絶対的恋愛境界線〜当て馬だってハピエン希望です!〜

「で? 何があったわけ?」

 ドリンクバーに飲み物を取りに行き、席に戻ると雪乃が尋ねた。

 徳香は少し口籠り、視線をゆらゆらと動かしてから、戸惑ったような表情で雪乃を見る。

「あのさ、聞きたいんだけど、恋にリハビリって必要だと思う?」

 雪乃の目が点になる。まるで時が止まったかのように微動だにしない。

「……状況が呑み込めないんだけど」
「うっ……だ、だからね、久しぶりに誰かと付き合うにあたって、あの、例えば手を繋いだり、恋人がやるようなことを練習しておくとかするのかなって思って……」
「うーん。どうかなぁ……女としては好きな人とすることが大事というか、思い出になったりするじゃない? だから練習したいとは思わないよね」
「うんうん! わかる、私もそう」
「でも、男の人についてはわからないなぁ。失敗したくないとか思ったりするのかな。カッコつけたい人もいるみたいだし」

 雪乃は目を細め、口元に笑みを浮かべる。

「なーにー? 松重さんが徳香とリハビリしたいって言ったの?」

 徳香が眉間に皺を寄せて黙り込んだことを肯定と受け取り、雪乃は驚いたように続ける。

「珍しいね。友達と恋人の線引きをしっかりする徳香が、そんな曖昧なことを許しちゃったわけ?」
「それが……なんかよくわからないうちにそういう展開になっちゃってて……もう引くに引けないし、どうしていいのかわからなくて……」
「でも松重さんは長崎さんが好きなんだよね?」
「うん、それは絶対。だってキスは長崎さんとのためにとっておくって言ってたし」
「じゃあ別に悩まなくていいんじゃない? 徳香が嫌じゃなければ、言葉のまま受け取ってもいいと思うけど。何か問題でもあるの?」

 更に深く眉根を寄せたかと思うと、急に真っ赤になって下を向く。それから頭を掻き始め、明らかに徳香が情緒不安定になっている様子が窺えた。
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