絶対的恋愛境界線〜当て馬だってハピエン希望です!〜
◇ ◇ ◇ ◇

 信久は徳香の家のチャイムを押した。走ってくる音がして、覗き穴で確認してるのだろうか、少し時間をあけてからドアが開いた。

 大きめの淡いピンクのトレーナーに、デニムを合わせ、ポニーテールがふんわりと揺れている。その姿に、信久は唾をゴクリと飲み込んだ。

「せっかくの休みなのに、うちで作業なんかでいいの?」

 徳香が申し訳なさそうに呟く。信久は早鐘のように打ちつけている心臓の音がバレないよう、いつものような冷静さを装った。

「映画見ながらでもいいんだよね? それならむしろ大歓迎」
「そう言ってくれるなら、ちょっと安心」
「あとこれ、長崎さんオススメのスイーツ。早速買いに行っちゃったよ。後で一緒に食べよう」

 信久は紙袋を手渡す。受け取った徳香は、思わず感嘆の声をあげた。

「これ知ってる! めちゃくちゃ並ぶので有名なお店だよね!」
「うん、かなり並んだ。でも長崎さんオススメなら買いに行くしかない」
「うふふ、確かに。やるね、信久」

 嬉しそうに部屋へ戻っていく背中を見送りながら、信久はホッと胸を撫で下ろす。

 行列の出来る店のスイーツを買っていったら怪しまれるんじゃないかと心配していたが、どうやら大丈夫そうだ。

『この店のタルトは、女子ならみんな好きだから!』

 長崎さんのアドバイス通りだったなーーあんなに嬉しそうな徳香の顔が見られたのだから、並んだ甲斐があるっていうものだ。

 そして徳香に警戒されないように、信久は会話の所々に杏の名前を放り込む。そうすることで友達の立場を確保しながら、少しずつ徳香に近付くというのが信久の計画だった。
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