絶対的恋愛境界線〜当て馬だってハピエン希望です!〜

「下を向いて歩いてたら危ないよ」
「だ、だって……! うっ、うっ、うえぇん……!」

 信久は顔を見た途端、とうとう我慢ができなくなって徳香は声を上げて泣き始めた。まるで信久が泣かせたような構図になっていることに慌て、徳香の手を引いて壁際に連れて行く。

 それからスーツの上着を開き、徳香を胸元に抱き寄せると、泣いている姿を隠すかのように上着で覆った。

 泣いても良いと言われた気がして、信久のシャツに顔を埋めて泣き続ける。彼の手が優しく頭を撫でると、徳香の気持ちは少しずつ落ち着きを取り戻していった。

 信久は徳香の肩から荷物を取り、代わりに持ってくれた。

「笹原さんにちゃんと伝えられたんだね」
「……ちゃんと伝えて、ちゃんとフラれてきた……っていうか、何で信久がここにいるの?」
「そんなの、徳香が心配だったからに決まってるじゃない。慰めるって約束したし」

 そのために……? ここでずっと待っててくれたってこと? ーー嬉しくて胸が温かくなるのを感じた。

「……ありがとう。来てくれて嬉しい……一人じゃ家に帰れないかったかも……」

 信久はいつものように柔らかく微笑んだ。

「お疲れ様。さて、どうやって慰めて欲しい? やっぱり映画三昧にする?」
「……じゃあこれから後お酒とおつまみを買って、うちで朝まで映画三昧にする!」
「了解。いつまでも付き合うよ」

 信久はポケットからハンカチを取り出すと、徳香の涙をそっと拭う。それから手を繋いで改札へと歩き出した。

「今日の服も可愛いな。笹原さんのために頑張ったんだ?」
「うん……」

 信久はいつも気付いてくれるんだーー徳香は悲しいのに頬が緩んでしまう。

 失恋してすぐに駆けつけてくれるなんて、なんて頼もしい友人だろう。信久がいてくれて良かったーーこんな時に一人にしないでくれたことに、心から感謝した。
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