絶対的恋愛境界線〜当て馬だってハピエン希望です!〜
◇ ◇ ◇ ◇

 終わりのテロップが流れ始めた頃、徳香は信久の膝に頭を載せたまま眠りに落ちてしまった。

 目元は赤く腫れ、頬には涙の跡も見える。彼女の髪を撫でながら、その可愛らしい寝顔に見惚れていた。

 この間の帰りの電車の中で、笹原さんと二人で食事に行くと報告してくれた。そしてその時に告白するともーー結果はもうわかっていからこそ、彼女が辛い時にそばにいたいと思った。

 絶対に残業はしないように仕事を終わらせ、二人が待ち合わせた時間には駅に着いた。とりあえずファストフードで夕食を済ませ、いつ徳香が駅に来てもいいように準備をしていた。

 そして一時間ほどで、徳香が駅に現れた。想像よりも力なく歩く姿を見て、信久は居ても立っても居られなくなって、彼女の元へと走っていた。

 徳香の頬にかかった一筋の髪を指で払う。

 こんなに泣いて、笹原さんのことを本気で好きだったんだなーー当たり前のことだけど、やっぱり悔しい。

 徳香には申し訳ないけど、本音を言えばようやく信久はスタート地点に立てたことになる。

 ただ問題なのは、信久が杏を好きだという設定だった。この設定があるからこそ、徳香は信久に好意的だし警戒していないわけだ。

 もし杏にはとっくに"好きだった"ことを伝えたと言ったら、今までのリハビリは何だったのかと、彼女の不信感を煽り、信頼を裏切ることになりかねない。

 どうするのが正解なのかわからなくて不安になる。これまでいろいろなことを徳香に仕掛けてきたのに、気持ちいいほどスルーされてきた。こんなに自分を友達扱いしている徳香の心を変えることなんて出来るのだろうか。

 信久は徳香の体をそっと抱き上げると、ベッドへ寝かせた。

 本当に無防備なんだからーーきっと自分のことを友達としか思ってないからだと思うと悲しくなる。

 寝息を立てている徳香の唇に、信久は恐る恐るキスをする。全く起きる気配のない様子に、もう一度キスをし、彼女の体を抱きしめる。ダメだとわかっていても、抑えることが出来なかった。

 君が好きなんだ。君が愛しい。君を俺のものにしたい……だから俺を見てよ、俺を好きになってよーー言葉にならない叫びを、信久はただ心の中で繰り返した。
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