絶対的恋愛境界線〜当て馬だってハピエン希望です!〜
* * * *

 鼻先をくすぐる美味しそうな匂いで、徳香はむくっと目を覚ました。全てにおける記憶が曖昧で、一つずつ時間を追って呼び覚ましていく。

 そう、昨日は笹原さんに告白してフラれて、信久が駅で待っていてくれて……それからうちに来て一緒に映画を見て……あぁ、そうだ。寝ちゃったんだ、私。ということは、この匂いの正体はーーそう思って、勢いよく起き上がる。

 徳香はキッチンと部屋の間にあるドアを開ける。するとそこには朝食を作っている信久がいた。

「あっ、おはよう。もう少しで出来るから待ってて。っていうか、冷蔵庫の中身勝手に使っちゃったけどね」
「それはいいんだけど……やだ、作ってくれたことにすごく感激してる……」
「そうなの? でもさすが毎日お弁当を作ってるだけあって、ちゃんと材料があるから助かったよ」

 ほうれん草のバター炒めとベーコンエッグが載ったお皿を徳香が運び、トーストとコンソメスープを信久が運ぶ。

「飲み物は何がいい?」
「麦茶でいいよ。冷蔵庫にあったし」
「……信久って理想的な夫になりそう」
「何で彼氏をすっ飛ばして夫なの?」
「頼りになるし、私に無駄な動きをさせないから」
「あぁ、なるほど」

 信久が作ってくれた温かい食事を食べながら、徳香はふっと笑顔になる。
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