絶対的恋愛境界線〜当て馬だってハピエン希望です!〜

「松重さんは? どんなお仕事してるの?」
「俺? 普通の会社員だよ。経理部の鬼に毎日しごかれてる。だから俺もいずれは経理部の鬼になるかもね」
「あはは! なにそれ。でもちょっと経理部っぽいかも。なんかメガネが理系男子みたい」
「うん、それよく言われる」
「ご、ごめんね! そうやって言われるの、嫌だった?」

 徳香は慌てて信久に頭を下げる。しかし彼は不思議そうに彼女を見つめていた。

「なんか小野寺さんって、サークルにいる時と印象違うね」
「そうかな? っていうか私ってどんな印象なの?」
「うーん、なんていうか……あざとい感じ?」
「……あなたね、本人目の前にしてはっきり言い過ぎじゃない?」

 徳香が頬を引き攣らせながら言うと、信久は突然笑い出す。最初は抵抗しようとした徳香だったが、何故かつられて笑い始めてしまう。

「バスケの時って、かなり猫かぶってるよね。やっぱり笹原さんを狙ってるから?」

 その瞬間、徳香は凍りついた。

 そうか、気付いていたのは私だけじゃなかったんだーー彼もまた、徳香のことを"笹原さんに片想いする女"として見ていたようだった。

「そりゃそうよ。そういうあなたはどうなの? 長崎さんの写真はたくさん撮れてる?」

 徳香が言うと、今度は信久が凍りついた。やはり徳香の勘違いではなかったようだ。
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