絶対的恋愛境界線〜当て馬だってハピエン希望です!〜
* * * *

 ショッピングモール前の待ち合わせ場所に現れた信久は、不機嫌そうな顔で徳香を見ていた。

「……どうして俺と出かける時はスカートじゃないの?」
「だって近所だしご飯食べるだけでしょ? それにどうして信久のためにオシャレしなくちゃいけないのよ?」

 すると信久は鼻息を荒くして、首から掛けたカメラを指差す。

「被写体は可愛い方が尚よい」
「……意味わかんない。ご飯を食べる写真を撮るわけ? というか失恋して落ち込む私を撮るつもり?」
「……アンニュイな感じが可愛いかと思って」

 信久が真顔で答える。それを聞いた徳香は吹き出す。

「可愛いって……私のことを可愛いって言うの信久くらいよ。まぁいっか。じゃあそろそろ行こう。お昼軽くしたからお腹空いちゃった」

 くるりと(きびす)を返して歩き出した徳香を、信久は慌てて追いかける。

 するとその瞬間、街路樹に取り付けられたライトが一斉に光り始めた。並んで歩いていた二人は思わず立ち止まる。

「へぇ……この時間に点灯するんだ、知らなかった」
「いつも気付くと点灯してたもんね。イルミネーションか……キレイだねぇ……」

 感嘆の声を漏らすが、徳香は浮かない表情をしている。

「本当はさ、笹原さんとやりたいことの中に『イルミネーションを一緒に見に行く』っていうのがあったんだよね……。もう叶わなくなっちゃったけど」
「……別に笹原さんに限定しなくても良いんじゃない? 次に付き合う人とやりたいことのリストに入れればいいよ」
「まぁねぇ……そう割り切れればいいんだけど……。失恋したての私にはまだ無理だわ」

 空を見上げた徳香の目は、今もまだ赤いままだったが、今ならきっと目立たないはずーーあれだけ泣き顔を見られた信久の前でなら、隠す必要もない気がして自然体でいられた。
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