絶対的恋愛境界線〜当て馬だってハピエン希望です!〜
◇ ◇ ◇ ◇

 徳香の目が更に赤くなった気がして、信久は一瞬言葉を失った。

 もしかして、俺が帰った後にまた泣いていた……? あの時帰らない方が良かったのかもしれない。そうすれば徳香を泣かせずにすんだのにーーそう思うと胸がチクリと痛む。

 信久は少し躊躇ってから、徳香の手をそっと握った。最近はこういうことにも慣れてきていた徳香は、照れるでも無表情でもなく、怪訝そうな顔で信久を見る。

「……これは何?」
「ん? 徳香ってばフラれちゃったから、不完全燃焼なんじゃないかなぁって」
「……だからってなんで手を握るの?」
「せっかくだから徳香の欲求を満たしてあげようかと思って。まぁ俺のリハビリも兼ねてだけど」
「まるで私が欲求不満みたいな言い方しないでくれる? でも仕方ないから、信久のリハビリには付き合ってあげる」
「そうなの? じゃあ付き合ってもらおうかな。ねぇ、こういうイルミネーションを見る時って、手を繋いだ方がいい? それとも腕を組む?」
「……私は彼ポケットがいいと思う」

 信久は思わず吹き出しそうになるのを堪える。本人は気付いていないようだが、徳香は頬を染め、少し嬉しそうに笑っていたのだ。

 そっか……徳香はそれがしたかったんだーー。

「なるほど。こういうことね。勉強になるな」

 信久が繋いだ手をジャケットのポケットに入れると、途端に徳香の体が硬直したのがわかった。

「確かにこれなら手も繋げるし、腕を組んだみたいに密着も出来るからいいかも」
「……あぁいやだ……また初体験を信久としてしまった……」

 徳香は諦めたように笑い、信久の腕にもたれかかる。

 今の言葉が俺をどれほど喜ばせたか、徳香は知らないだろうなーーそんなふうに思いながら、信久はポケットの中でそっと恋人繋ぎに握り変えた。

 徳香は恥ずかしそうに下を向く。彼女の指がぎこちなく絡む感覚に、信久はこの上ない喜びを感じていた。

 この時間がいつまでも続けばいいのにーーそのために、今度は自分が気持ちを伝えなければ。
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