絶対的恋愛境界線〜当て馬だってハピエン希望です!〜
◇ ◇ ◇ ◇

 帰りの電車の中で、信久はスマホの画面を見つめたまま考えに(ふけ)っていた。

 週が明けてしばらくは、夜のちょっとしたメールを送るくらいで電話はしなかった。だってあまりしつこいのも良くないし、かと言って心配してないとも思われたくなかったから。

 毎週末誘ってるけど、これってどうなのかなーー今までは友達として遊んでいたけど、このまま行けばずっと友達止まりだろう。

 彼女の心の傷が癒えるまでは、友だちとしての距離を保つべきだと考えていたが、そんなことをしている間に新しい男が出現するかもしれない。そうならないために徳香の予定を埋めておくべきだと結論づけた信久は、徳香にメッセージを打ち始めた。

『週末って予定ある?』

 するとすぐに返事が返ってくる。

『土曜日は飲み会に誘われちゃったから、日曜日なら大丈夫』

 飲み会だって? ーー信久は動揺して、思わずスマホを落としそうになる。

 今まで徳香が飲み会に行くなんて聞いたことがなかった。しかもこのタイミングで飲み会ってーー信久が危惧していた新しい出会いのための飲み会としか思えなかった。

『へぇ、珍しいね。女友達と?』

 なんとか冷静を装いながらメッセージを打つ。

『サークルにいる大前(おおまえ)雪乃ってわかる? その子に誘われて。男女十人ずつくらいで飲むらしい』

 ああ、恐れていたことが現実になってしまった打撃で、信久はがっくりと項垂れた。

 それは飲み会という名の合コンだと徳香に伝えたい。いや、伝えたところで何になる。それより何か手を打たないとーー。

『そうなんだ。実は俺も土曜日は飲み会。ちなみに場所はどこ?』
『新宿の居酒屋』
『偶然。俺も新宿』

 そんな予定は入ってないのに、つい嘘をついてしまったが、嘘を真にすればいいだけの話だ。

 すると、徳香から思いがけないメッセージが届いた。

『そうなの? もし終わる時間が同じだったら、一緒に帰らない?』

 信久はゴクリと唾を飲んだ。徳香が飲み会よりも、俺と帰る方を優先してくれるなんて、嬉しくて叫んでしまいそうになるのをぐっと堪える。

『いいよ。じゃあ終わる頃に連絡して』

 それに対して"OK"の可愛いスタンプが返ってきたので、つい顔が綻んでしまう。

 俺って徳香に振り回されっぱなし。でもこんな感覚、長崎さんにはなかった。きっとこれが恋なんだーー信久は苦しくなった胸をギュッと握りしめた。
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