秘密のベビーのはずが、溺甘パパになった御曹司に一途愛で包まれています
 佐々木の家からは、絶縁宣言をして以来連絡はない。

 まだ警戒を解いてない大雅は、常に梨香の動向を探っている。
 それによると彼女は、父によって精神科への通院を強制されていたが、素直に通いはしなかった。なんども家を飛び出そうとする梨香にさすがに手を焼いたのか、いろいろと手を回して強制的に入院させたらしい。

 責任放棄にすぎないと考えてしまうが、とりあえず母と姉を引き離したのだけは間違いでないはず。
 そして、父の方こそ通院が必要なはずだと思うが、そこはもう私の口出すことではないだろう。

 当の母はと言えば、姉がいないのならつまらないからと早々に実家に帰ってしまっていた。この人はいつまでたっても大人になれないのだと、耳にしたその様子に嘆息した。
 相変わらず好き勝手して自由に過ごしているというが、実家はすでに代替わりしており、母の存在は疎ましくなっているようだ。

 あれだけ結びつきの強い母娘だったのに、実際にはそれほどの愛情はなかった。なんとなく察してはいたけれど、あっけないものだったと、なんだか拍子抜けする。

 幼い頃の自分が羨ましがった〝家族〟は、実際は表面上でつながっていただけの関係だった。心の片隅に居座っていた虚しさは、そんなものに固執していても結局幸せにはなれなかっただろうと理解して、完全に吹っ切れた。

 すっかり意気消沈した父は、そのまま任期の途中で辞職する道を選んだ。当然、後任も立てられず、親子二代にわたって引き継いできた地盤はあっさりと他人の手に渡った。
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