S系御曹司は政略妻に絶え間なく愛を刻みたい~お見合い夫婦が極甘初夜を迎えるまで~
 それから、部長に聞こえるように、

「部長は浅はかな考えで『無茶な』仕事をふってないと思います。きっと部長も期待してくれてるんですよ。私がちゃんと実績をつけて、『定年まで』この会社にいられるように」

と言った。
 部長がどんな顔をしているか気になったが、ちょうど人が通って見えない。

 三堂さんが大袈裟に泣きまねをしながら言った。

「なんて健気な……」
「別に健気なんかじゃなくて……。なんだかんだ、仕事をこうして任せていただけるのは嬉しいですし」
「まぁ、ガガガーっとこなして、パーッと飲みにでも行こうぜ! 愚痴なら何でも聞くからな!」
「あー……今日はだめなんです。これもやっつけちゃいたいんで。でも誘ってくれてありがとうございます」

 私は頭を下げると、パソコンに向き合った。
 それからスマホでファイル内の各所に電話を始める。

「そう言ってほとんど飲み会には顔出さないんだよね」
「なんか、病気のおじいさんと一緒に暮らしてるとか聞いたぞ」
「うっそ。さらに看病……?」

 二人のそんな話題は耳に入っていなかった。
 ただ、私は電話をしながら、多少……いや、結構苛々とはしていた。

―――そう、『彼』は浅はかな考えで意地悪なんてしてない。
 私をこの会社から本気でやめさせようとしているだけで……。

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