S系御曹司は政略妻に絶え間なく愛を刻みたい~お見合い夫婦が極甘初夜を迎えるまで~

 男は私を見るなり、目尻を少し下げ、微笑んで言う。

「お帰り」
「そちらこそ、お早いお帰りですね」
「上司が早く帰らないと部下が帰りづらいだろ」

 そう言って目の前の男、北条要は笑う。会社ではあまり見せないプライベートな明るい笑顔だ。

 でも、私はまだ今日の心の整理がついていないので、むっとしたまま返す。

「どのみち早く帰れませんでした。研修の件、丸投げして気にならないんですか。あの後も大変だったんですから」
「でも、いろはならなんとかするだろ」

 そう言って、目の前の男は悪びれもせずに、目を細める。
 その顔を見ると、ぐ、っと言葉に詰まってしまい、私は慌てて目をそらした。

「私に、早く仕事辞めさせたいだけじゃないですか。私には仕事せずに家にいてほしいっていっつも言ってるし。事実、最初だって……」
「まぁ、その考えは今も変わらないけどな」
「ほら」

 私はむっとしながらさらに続ける。「だから、無茶振りしてくる時の要さんの楽しそうな笑顔を見てると、正直、イライラとしてしまうことがあります」

 上司に対してこの物言いはどうだろうと思うのだけど……。
 だけど、何を言っても、要さんは余裕の笑顔で微笑むだけ。そして……

「あれは、いろはが臍を曲げている顔がかわいいなと思って見てるだけだ」

 なんて、爆弾をさらっと投下してくる。
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