S系御曹司は政略妻に絶え間なく愛を刻みたい~お見合い夫婦が極甘初夜を迎えるまで~

「ど、どんな性格してるんですか!」
「はい、もうこの話はおしまい。物理的にも精神的にも仕事を持ち込むのはルール違反だ。忘れたか」
「忘れていませんが」

 でも文句が言い足りない。負けるのが分かっていても……。

 そんな私を見て要さんは微笑むと、リビングのテーブルの上にいつもながらにおいしそうな料理を並べ始める。
 今日も、鴨のソテーにサーモンのオレンジマリネなど、家でつくるという発想の全く湧かない(少なくとも私は)という料理ばかり。しかも見た目だけでなく味もいいのだから、余計にこの男は食えないと思ってしまう。

「ほら、食事もできてる。食べよう」
「またおいしそうな……っていうか今日も要さんが作ったんですね。ホント料理好きですよね」
「まぁ、いろはよりは上手だしな」

 からかうように言われれば、思わず眉を寄せてしまう。
 何をしてもかなわない男だ。そう思っていると、要さんは微笑んで加えた。

「大切な人の身体になるものは、自分で納得できるものを用意したいんだ」

 ほら、また。
 こうして当たり前のように優しくしてくる。言葉も自覚があるのかないのかやたらに甘みを孕んでいる。そう言うところが、ずるいし、あざとい。

 私は思わず口を噤んだ。

「大切なって……」

 流れるように、席に座らされると、要さんも向かい合って座る。

 見た目は完全フレンチなのに、二人で手を合わせて、いただきます、と声の重なる瞬間が、私はこの生活の中で一番好きな瞬間だった。
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