転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました 番外編
「駄目だ。着替えてこい」
にべもなくディーに却下されてサマラはポカンとする。
「え……えー? 素敵だと思うけどなあ。お父様は気に入りませんか?」
困惑しながら尋ねたサマラに、ディーは娘ではなく店主を睨みつけながら言った。
「おい。娘に下品なドレスを勧めるな」
「げ、下品……ですか?」
店主もサマラも目をぱちくりとしばたたかせる。ドレスのデザインは下品どころかとても上品だ。いったい何が気に食わないのか頭が「?」でいっぱいになったとき、サマラはハッと気づいた。
(もしかして……これ!?)
ドレスは襟ぐりがやや大きく開いており、そこからデコルテを覆うように黒のレースがチョーカーへと繋がっている。レースには銀糸で蔦模様が刺繍されていて、その大人っぽさと上品さがこのドレスの特徴だ。
しかし、見ようによってはもしかしたらいささか色っぽくあるかもしれない。もしこれを豊満な胸の女性が着たらセクシーと言えるかもしれないが、着るのはまだまだ発展途上のサマラだ。誰ひとりとしてセクシーさを感じないだろう。
(心配性というか過保護というか……)
サマラは心の中でトホホと苦笑する。しかしここで駄々を捏ねてディーの機嫌を損ねても面倒くさいので、おとなしく違うドレスを選ぶことにした。
「じゃああまり大人っぽくないのにしますね。店主さん、お勧めはありますか?」
サマラの言葉で店主もなんとなくディーの不服の理由がわかったようだった。今度はさっきと打って変わって、ライトグリーンのドレスを持ってきてくれた。
「試着してみますね!」と言ってサマラは早速着替えに行く。ドレスはレースをあしらった爽やかで可愛らしいもので、元気いっぱいの少女によく似合いそうなデザインだ。ペアの三つ揃いのほうはベストを同じライトグリーンで合わせつつ、上着と脚衣はアースカラーにしてある。これはこれで自然を愛する魔法使いらしいコーディネートだった。
しかし。
「却下。小さな子供じゃあるまいし、そんなに脚を出すな」
ディーは、少女らしさを活かしたフィッシュテールスカートがお気に召さなかったようだ。とはいえ前丈は膝が隠れるぐらいの長さで短すぎるわけではないのだが。
続いて店主が持ってきたドレスはベルベッドに金のリボンを合わせたものだったが、袖がシースルーのレースだったので却下となった。
『俺はなんでも構わん』とはなんだったのかとツッコミたい衝動を店主は必死にこらえる。
「……もういい。サマラ、帰るぞ。この店は下品なドレスしか置いていないらしい」
ついに痺れを切らしたディーが、眉間に皴を刻み呆れたため息を吐き捨てながら言う。サマラが絶望的な気持ちで「そんな!」と叫んだときだった。
「お待ちください、閣下! ならばこれはいかがでしょう!?」
店主が奥の手とばかりに持ってきたのは、純白のドレスだった。
ハイネックに長袖、ロング丈と極限まで露出が低く、シースルー部分もない。とにかく僅かにでも色気を感じさせるのが却下なのだと悟った店主の、最良の判断だった。
徹底して露出させない形はまるで修道服だが、ペティコートを重ね膨らんだスカートと大きなバックリボンはお姫様のドレスのようで可愛らしい。
試着したサマラをディーは見やると、ようやく「これがいいなら好きにしろ」とOKを出し、サマラと店主は思わず手を打ちあって喜んだのだった。
「閣下はご試着されなくて本当によろしいのですか?」
会計の段取りをしながら店主が尋ねると、ディーは「構わんと言っただろうが」と返す。そしてどこからともなく使い魔のブラウニーをひとり呼び出すと「サイズはその者が把握しているから聞け」とだけ言い残し、会計を済ませて帰っていったのであった。
にべもなくディーに却下されてサマラはポカンとする。
「え……えー? 素敵だと思うけどなあ。お父様は気に入りませんか?」
困惑しながら尋ねたサマラに、ディーは娘ではなく店主を睨みつけながら言った。
「おい。娘に下品なドレスを勧めるな」
「げ、下品……ですか?」
店主もサマラも目をぱちくりとしばたたかせる。ドレスのデザインは下品どころかとても上品だ。いったい何が気に食わないのか頭が「?」でいっぱいになったとき、サマラはハッと気づいた。
(もしかして……これ!?)
ドレスは襟ぐりがやや大きく開いており、そこからデコルテを覆うように黒のレースがチョーカーへと繋がっている。レースには銀糸で蔦模様が刺繍されていて、その大人っぽさと上品さがこのドレスの特徴だ。
しかし、見ようによってはもしかしたらいささか色っぽくあるかもしれない。もしこれを豊満な胸の女性が着たらセクシーと言えるかもしれないが、着るのはまだまだ発展途上のサマラだ。誰ひとりとしてセクシーさを感じないだろう。
(心配性というか過保護というか……)
サマラは心の中でトホホと苦笑する。しかしここで駄々を捏ねてディーの機嫌を損ねても面倒くさいので、おとなしく違うドレスを選ぶことにした。
「じゃああまり大人っぽくないのにしますね。店主さん、お勧めはありますか?」
サマラの言葉で店主もなんとなくディーの不服の理由がわかったようだった。今度はさっきと打って変わって、ライトグリーンのドレスを持ってきてくれた。
「試着してみますね!」と言ってサマラは早速着替えに行く。ドレスはレースをあしらった爽やかで可愛らしいもので、元気いっぱいの少女によく似合いそうなデザインだ。ペアの三つ揃いのほうはベストを同じライトグリーンで合わせつつ、上着と脚衣はアースカラーにしてある。これはこれで自然を愛する魔法使いらしいコーディネートだった。
しかし。
「却下。小さな子供じゃあるまいし、そんなに脚を出すな」
ディーは、少女らしさを活かしたフィッシュテールスカートがお気に召さなかったようだ。とはいえ前丈は膝が隠れるぐらいの長さで短すぎるわけではないのだが。
続いて店主が持ってきたドレスはベルベッドに金のリボンを合わせたものだったが、袖がシースルーのレースだったので却下となった。
『俺はなんでも構わん』とはなんだったのかとツッコミたい衝動を店主は必死にこらえる。
「……もういい。サマラ、帰るぞ。この店は下品なドレスしか置いていないらしい」
ついに痺れを切らしたディーが、眉間に皴を刻み呆れたため息を吐き捨てながら言う。サマラが絶望的な気持ちで「そんな!」と叫んだときだった。
「お待ちください、閣下! ならばこれはいかがでしょう!?」
店主が奥の手とばかりに持ってきたのは、純白のドレスだった。
ハイネックに長袖、ロング丈と極限まで露出が低く、シースルー部分もない。とにかく僅かにでも色気を感じさせるのが却下なのだと悟った店主の、最良の判断だった。
徹底して露出させない形はまるで修道服だが、ペティコートを重ね膨らんだスカートと大きなバックリボンはお姫様のドレスのようで可愛らしい。
試着したサマラをディーは見やると、ようやく「これがいいなら好きにしろ」とOKを出し、サマラと店主は思わず手を打ちあって喜んだのだった。
「閣下はご試着されなくて本当によろしいのですか?」
会計の段取りをしながら店主が尋ねると、ディーは「構わんと言っただろうが」と返す。そしてどこからともなく使い魔のブラウニーをひとり呼び出すと「サイズはその者が把握しているから聞け」とだけ言い残し、会計を済ませて帰っていったのであった。