転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました 番外編

 そうして翌月。パーティー当日。

 会場に入ってきたサマラとディーを見て、カレオはじめ出席者たちが目を丸くする。

「これはこれは……閣下、サマラ様、とてもお似合いですね。……お似合いすぎるというかなんというか……」

 カレオにそう声をかけられ、サマラは赤くなった顔でなんともいえない笑顔を浮かべた。

 サマラとディーの父娘ペアルック。サマラのドレスが純白ということは、つまり……ディーの三つ揃いも白色メインなのだ。

 ベストは紫色だが上着と脚衣は白色で、上着の襟と袖には刺繍が入っている。クラヴァットピンはサマラのブローチとお揃いのピンクダイヤだ。

 試着のときはとにかくディーのお眼鏡にかなうことしか頭になかったが、こうしてペアになってサマラは初めて気づいたのだ。これではまるで――結婚式の新郎新婦ではないかと。

 おそらくパーティー会場にいる誰もがうっすらそう思っているだろう。あの気難しやで俗世間が嫌いな孤高の魔法使いが父娘ペアルックを着てきただけでも驚きなのに、まるで疑似結婚式なのだ。誰も口に出せずにいるが皆心の中は驚愕し、我が目を疑って何度もチラ見していた。

 そして肝心のディーは――新郎新婦状態なことに気づいているのかいないのか、いつもと変わらぬ冷めた顔をしていた。

(閣下も随分変わられたというかなんというか。いや、あの人ファッションに関心がないから本当にわかってないのか? いくらサマラ様に甘くなったとはいえ、わかっていたら結婚ごっこみたいな格好はさすがにしないよな)

 遠目にディーとサマラを眺めていたカレオだったが、ふと、ある光景に気づく。ふたりから少し離れたところでサマラに挨拶しようとしていた貴族の青年が、何かを察したように退散していったのだ。

(……なるほど? 虫除け……のつもりか? まあ閣下のことだからわざとなのかどうかわからないけど。年頃の娘を持つというのは気苦労が多いことだけはわかりました)

 クスっと小さく笑い、カレオはテーブルのドリンクを取るとディーとサマラのもとへと歩いていった。途中でソワソワとサマラに注目していた貴族青年の視線をさりげなく遮りながら。


 こうして、アリセルト親子のペアルックは密かに大きな話題となり、『Fluffy』は「あの大魔法使いにペアルック、しかも新郎新婦風衣装を着せた凄腕の店主」としてますます人気を博すことになったのだった。

 そしてサマラは次のお茶会で友人たちに散々その話題を振られ、終始顔を赤くしていたのは言うまでもない。

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