天敵御曹司は政略妻を滾る本能で愛し貫く
相良優弦を初めて見たとき――、本当に、自分の体が自分のものじゃないみたいに感じて、すごく怖かった。
今日はもう疲れているのでさすがに気力がないが、明日になったら番についてもっと資料を読みこんでおこう。
「やることだらけね……」
身に纏っている着物をじっと見つめた。
祖母が生前に最後に残してくれた、大切な着物。
この着物を着ているときは、不思議と強くいられる気がするのだ。
「おばあちゃま……会いたい……」
空気を吐いた瞬間、本音が同時に口を突いて出てしまった。
何もない部屋では、私の寂しいひとりごとなどあっという間に消えていった。
テレビドラマではよく、転校生や新人OLがいじめられるシーンがあるけれど、それと同じ世界が、今目の前に広がっている。
「これは……明らかに腐ってるわね」
私に用意された朝食は、一部の食材が明らかに腐敗していた。
卵焼きは切れ端で、サラダもきゅうりのヘタが沢山入っている。
朝食の準備ができたと言われたので行ってみると、他の女中とは全く違う食事が用意されていたのだ。
「五時になっても寝ていたから、あまりものですけど」
百合絵さんはそう言って、ほかの女中たちとクスクス笑っている。
彼女には昨日、六時にお台所に来なさいと言われていたけれど……。
私はぐっと言いたいことを我慢し、何も手を付けずにすぐに食器を片付けた。
相良家の本家には、旦那様の弟二人の家族と合わせて、計二十人が暮らしている。
離れに住んでいるので、弟家族と会うことはほとんどないけれど、朝食は女中が全員分用意するらしい。
いったいいつの時代なのだろうと、気が遠くなるような家族だ。
親族はなるべく一緒に暮らしなさいという先祖の言い伝えを、いまだに守っているらしい。
この家は、完全に思考が停止してしまっているように感じる。
「朝食の準備は私達でやりますから、ひとりでトイレ掃除をお願いしますね。この家にはいくつもトイレがありますから。あ、備品の補充も完璧にしておいてください」
「分かりました」
百合絵さんはそれだけ言い残すと、数人の女中とすーっと食品保管庫に入っていった。
トイレの掃除用具の場所はどこか、トイレは結局全部でいくつあるのか、備品は何をいくつ用意しておいたら〝完璧〟になるのか。
今日はもう疲れているのでさすがに気力がないが、明日になったら番についてもっと資料を読みこんでおこう。
「やることだらけね……」
身に纏っている着物をじっと見つめた。
祖母が生前に最後に残してくれた、大切な着物。
この着物を着ているときは、不思議と強くいられる気がするのだ。
「おばあちゃま……会いたい……」
空気を吐いた瞬間、本音が同時に口を突いて出てしまった。
何もない部屋では、私の寂しいひとりごとなどあっという間に消えていった。
テレビドラマではよく、転校生や新人OLがいじめられるシーンがあるけれど、それと同じ世界が、今目の前に広がっている。
「これは……明らかに腐ってるわね」
私に用意された朝食は、一部の食材が明らかに腐敗していた。
卵焼きは切れ端で、サラダもきゅうりのヘタが沢山入っている。
朝食の準備ができたと言われたので行ってみると、他の女中とは全く違う食事が用意されていたのだ。
「五時になっても寝ていたから、あまりものですけど」
百合絵さんはそう言って、ほかの女中たちとクスクス笑っている。
彼女には昨日、六時にお台所に来なさいと言われていたけれど……。
私はぐっと言いたいことを我慢し、何も手を付けずにすぐに食器を片付けた。
相良家の本家には、旦那様の弟二人の家族と合わせて、計二十人が暮らしている。
離れに住んでいるので、弟家族と会うことはほとんどないけれど、朝食は女中が全員分用意するらしい。
いったいいつの時代なのだろうと、気が遠くなるような家族だ。
親族はなるべく一緒に暮らしなさいという先祖の言い伝えを、いまだに守っているらしい。
この家は、完全に思考が停止してしまっているように感じる。
「朝食の準備は私達でやりますから、ひとりでトイレ掃除をお願いしますね。この家にはいくつもトイレがありますから。あ、備品の補充も完璧にしておいてください」
「分かりました」
百合絵さんはそれだけ言い残すと、数人の女中とすーっと食品保管庫に入っていった。
トイレの掃除用具の場所はどこか、トイレは結局全部でいくつあるのか、備品は何をいくつ用意しておいたら〝完璧〟になるのか。