天敵御曹司は政略妻を滾る本能で愛し貫く
「でももう、何も制御しない。君は、俺の全部を受け入れるんだ」
「あ、ダメっ……」
 優弦さんの長い指が敏感な部分に触れて、脳が溶けそうになる。
 熱い吐息が首に触れて、意識が朦朧としていく。
 このまま、抗えない熱に、飲み込まれてしまいそう――。
「世莉。愛してる。もう一生、俺のものだ……」
「優弦さん、もう私……っ」
「顔を隠さないで。……こっちを見て」
 そっと顔を隠している手を外され、涙目のまま優弦さんを見つめた。
 あまりに愛おしげな瞳で見つめられていることを知って、余計に体の熱が上がる。
 こっちは快楽に耐えることに必死になっていたというのに、優弦さんはいまだ余裕な様子だ。
「好きだよ、世莉……」
「え、あっ……」
 ちゅっと耳にキスをされたと同時に、痺れるような感覚がつま先から駆け巡った。
 優弦さんの体温が心地よくて、息を乱しながら思わず胸にすり寄る。
 彼の体温、香り、声、動作全てに、全身の細胞が反応している。
 運命の番なんてどうでもいいと思っていたけれど、遺伝子レベルで相性がピッタリという事実は認めざるをえない。
 私を胸に抱えながら、優弦さんがそっと私のうなじの噛み跡を優しく撫でた。
「結婚指輪なんかより、ずっと独占欲が満たされるな」
「な、何を言ってるんですか……っ」
 冗談を言って笑う優弦さんの発言を制するも、「俺は世莉が思う以上に嫉妬深いよ」と囁かれ、うなじに吸い付かれてしまった。
 噛み跡から感じる、鈍い痛み。
 その痛みさえも愛おしいと感じるのは、もう重症なのだろうか。
 どちらにせよ私はもう、この人を心底愛してしまっている。
 数え切れないほど、自分自身のことを憎んできたこの人のことを。
――ありがとう、世莉。
 あの時、優弦さんが泣いていたことを、この世界で私だけが知っている。
 その事実だけで、私は一生この人のそばにいようと思えたのだ。
「優弦さん、愛してます……」
 彼の広い背中に、ゆっくりと腕を回す。
 降り注がれる惜しみない愛に、今夜はこのまま溺れてしまおうと思った。
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