天敵御曹司は政略妻を滾る本能で愛し貫く
――肌が触れ合うと、無条件で発情してしまうことがあるから……。
これが、彼が忠告していたことなのだろうか。
息を切らしている私とは反対に、優弦さんは至って冷静な態度だ。
「世莉さん、まさか……」
「離れてください……っ」
ぐっと胸を押しのけるも、熱は収まらない。
そして本能では、離れてほしくないと思っている。
無理だ。正常な判断ができない。長湯しているときみたいにぼうっとして、視界がぼやけてくる。
「俺はアルファ型用の抑制剤を飲んでいるから平気だけど……、辛いでしょう」
抑制剤……? そんな薬が存在するの……?
朦朧とする意識の中、私はただこの熱を無くす方法だけが知りたい。
「どうすれば……っ」
苦しそうにつぶやくと、優弦さんは一瞬黙り込んでから、覚悟を決めたように再び私に近づいてきた。
そして、ぐっと私の体を抱き寄せる。
「やめて、触らないで……っ」
「落ち着いて。何も考えないで。このままだと過呼吸症候群になってしまう」
脳が、クラクラする。抗えない。
優弦さんの腕に包まれた瞬間、本能で抱かれたくてたまらなくなるなんて……。
「君が、相良家を恨むのは当然だ」
「え……?」
「俺は、君に殺されたって仕方ないと思っている」
目に涙を浮かべ堪えていると、耳元でそんなことを囁かれた。
ああ、そうか、この人には、私がどんな思いで嫁いできたのか全て見透かされていたのか――。
そうと分かった瞬間、一気に脱力して、体に力が入らなくなっていく。
恨まれてでも嫁にする覚悟を、この人はしていたのだ。だからこんなに落ち着いているのだ。
すっと浴衣を剥がされて、優弦さんの冷たい手が入ってきた。
「これは処置だから、ここには何の感情も必要ない。君は自分を責める必要は一切ない」
「あっ……」
「憎むなら、俺を憎んで」
これ以上の放置は危険とみなしたのだろうか。
優弦さんは苦しそうに顔を歪めて、「……少し、触るよ」と低い声でつぶやく。
「待っ……んっ」
今、どうしようもなく抱いてほしいと願っている相手は、この世で一番、憎い人だなんて。
「君に欲情していいのは……、俺だけだ」
朦朧とする意識の中、彼は宣言するようにそんなことを囁いた。
寝間着の淡い水色の浴衣は簡単に片手で剥がされてしまい、肌が外気に晒された。
これが、彼が忠告していたことなのだろうか。
息を切らしている私とは反対に、優弦さんは至って冷静な態度だ。
「世莉さん、まさか……」
「離れてください……っ」
ぐっと胸を押しのけるも、熱は収まらない。
そして本能では、離れてほしくないと思っている。
無理だ。正常な判断ができない。長湯しているときみたいにぼうっとして、視界がぼやけてくる。
「俺はアルファ型用の抑制剤を飲んでいるから平気だけど……、辛いでしょう」
抑制剤……? そんな薬が存在するの……?
朦朧とする意識の中、私はただこの熱を無くす方法だけが知りたい。
「どうすれば……っ」
苦しそうにつぶやくと、優弦さんは一瞬黙り込んでから、覚悟を決めたように再び私に近づいてきた。
そして、ぐっと私の体を抱き寄せる。
「やめて、触らないで……っ」
「落ち着いて。何も考えないで。このままだと過呼吸症候群になってしまう」
脳が、クラクラする。抗えない。
優弦さんの腕に包まれた瞬間、本能で抱かれたくてたまらなくなるなんて……。
「君が、相良家を恨むのは当然だ」
「え……?」
「俺は、君に殺されたって仕方ないと思っている」
目に涙を浮かべ堪えていると、耳元でそんなことを囁かれた。
ああ、そうか、この人には、私がどんな思いで嫁いできたのか全て見透かされていたのか――。
そうと分かった瞬間、一気に脱力して、体に力が入らなくなっていく。
恨まれてでも嫁にする覚悟を、この人はしていたのだ。だからこんなに落ち着いているのだ。
すっと浴衣を剥がされて、優弦さんの冷たい手が入ってきた。
「これは処置だから、ここには何の感情も必要ない。君は自分を責める必要は一切ない」
「あっ……」
「憎むなら、俺を憎んで」
これ以上の放置は危険とみなしたのだろうか。
優弦さんは苦しそうに顔を歪めて、「……少し、触るよ」と低い声でつぶやく。
「待っ……んっ」
今、どうしようもなく抱いてほしいと願っている相手は、この世で一番、憎い人だなんて。
「君に欲情していいのは……、俺だけだ」
朦朧とする意識の中、彼は宣言するようにそんなことを囁いた。
寝間着の淡い水色の浴衣は簡単に片手で剥がされてしまい、肌が外気に晒された。