天敵御曹司は政略妻を滾る本能で愛し貫く
血相を変えている相良院長のうしろには……、暗い顔をした相良優弦がいた。
目は合わなかったものの、写真で顔だけは知っていたので、すぐに分かった。
どうして……?
祖母は今にも危険な状態なのに、どうしてその人を優先するの……?
私は立ち尽くしたまま、泣き叫ぶしかなかった。
その後、祖母も処置を受けたけれどもう手遅れで、そのまま還らぬ人となった。
時間にしたら十分ほどの差だったけれど、もしかしたら最初から手遅れだったのかもしれないけれど、怒りの根源はそこではない。
勝手な理由で命を選別した相良家を――、あの日あの瞬間、私は絶対に許さないと誓ったのだ。
遺伝子がほしいのなら、くれてやる。
でも私は、絶対に相良家には屈しない。
相良家の嫁になって、内部から何もかもめちゃくちゃにしてやるのだ。
そして、もうこれ以上私のような被害者を出さないために、相良病院を陥れる。
おばあちゃまのためになら……、私は悪魔にだってなろう。
「あ……」
相良家への恨みを増幅させたそのとき、さあっと強い風が吹いて、落葉が目に入りそうになった。
思わず目を閉じ、そっと開けると、遠くの庭に、グレーの着物を身に纏った高身長の男性が見えた。
相良家の人間だろうか……。玄関の前で動かない私を不審に思ったに違いない。
恐る恐る男性の顔にピントを合わせると――、その瞬間、心臓がドクンと大きく跳ねた。
「えっ……何これっ……?」
体温が一気に上昇し、自分の感情とは関係なく、動悸が激しくなる。
〝運命の番は、目が合った瞬間分かる〟。
全く信じていなかった説が、頭の中にすぐに浮かんできた。
嫌だ。そんな訳ない。運命の番なんて、この世にいるわけない。
それなのに、心臓はドクン、ドクン、ドクンと、激しく鼓動し続ける。
「相良、優弦……っ」
「君は……」
濡れたように艶やかな黒髪に、切れ長の瞳。
優美な和の景色が一気に霞んで見えるほど、美しい顔立ち。
私と同じように目を見開き驚いている、恐ろしいほど容姿端麗なその男を、私は思い切り睨みつけた。
初めて今、目が合った。
私が、今まで憎くて憎くて仕方なかった男と。
心は憎悪でいっぱいなのに、体は彼に愛されたがっている。
相反する感情で、胸がちぎれてしまいそうだ。
目は合わなかったものの、写真で顔だけは知っていたので、すぐに分かった。
どうして……?
祖母は今にも危険な状態なのに、どうしてその人を優先するの……?
私は立ち尽くしたまま、泣き叫ぶしかなかった。
その後、祖母も処置を受けたけれどもう手遅れで、そのまま還らぬ人となった。
時間にしたら十分ほどの差だったけれど、もしかしたら最初から手遅れだったのかもしれないけれど、怒りの根源はそこではない。
勝手な理由で命を選別した相良家を――、あの日あの瞬間、私は絶対に許さないと誓ったのだ。
遺伝子がほしいのなら、くれてやる。
でも私は、絶対に相良家には屈しない。
相良家の嫁になって、内部から何もかもめちゃくちゃにしてやるのだ。
そして、もうこれ以上私のような被害者を出さないために、相良病院を陥れる。
おばあちゃまのためになら……、私は悪魔にだってなろう。
「あ……」
相良家への恨みを増幅させたそのとき、さあっと強い風が吹いて、落葉が目に入りそうになった。
思わず目を閉じ、そっと開けると、遠くの庭に、グレーの着物を身に纏った高身長の男性が見えた。
相良家の人間だろうか……。玄関の前で動かない私を不審に思ったに違いない。
恐る恐る男性の顔にピントを合わせると――、その瞬間、心臓がドクンと大きく跳ねた。
「えっ……何これっ……?」
体温が一気に上昇し、自分の感情とは関係なく、動悸が激しくなる。
〝運命の番は、目が合った瞬間分かる〟。
全く信じていなかった説が、頭の中にすぐに浮かんできた。
嫌だ。そんな訳ない。運命の番なんて、この世にいるわけない。
それなのに、心臓はドクン、ドクン、ドクンと、激しく鼓動し続ける。
「相良、優弦……っ」
「君は……」
濡れたように艶やかな黒髪に、切れ長の瞳。
優美な和の景色が一気に霞んで見えるほど、美しい顔立ち。
私と同じように目を見開き驚いている、恐ろしいほど容姿端麗なその男を、私は思い切り睨みつけた。
初めて今、目が合った。
私が、今まで憎くて憎くて仕方なかった男と。
心は憎悪でいっぱいなのに、体は彼に愛されたがっている。
相反する感情で、胸がちぎれてしまいそうだ。