天敵御曹司は政略妻を滾る本能で愛し貫く
「世莉……」
俺はそっと部屋の中に入ると、寝ながら涙を流している彼女の頬をそっと撫でた。
そのまま涙を拭うと、彼女は小さく唸り声を出す。
玉のように美しい白い肌に、涙の跡がいくつもできている。
それを見ただけで、胸が千切れるほど、ぎゅっと苦しくなった。
「世莉、愛してる……」
本心が、口からこぼれ出てしまった。
今まで、一度も口にしたことなどなかったというのに。
切なさと愛しさが複雑に折り重なって、どうしようもなくなる。
ふいに出てしまった告白に、自分自身でも驚いていた。
俺は……世莉を愛している。遺伝子など、関係ないところで、彼女を愛しいと思う。
でも、そのことを今の彼女に伝えることなど、到底できないと思った。
世莉にとって、たとえ俺がどんな人間だろうと、きっと関係ない。
俺が相良家の一族で、跡取りである限り、世莉は俺といればいるほど祖母のことを思い出して、悲しくなるだろう。
そんな状態で、彼女に思いを伝えることは、酷すぎる。だから……この気持ちは一生伝えない。
でも、それでもいい。俺はただ、彼女のそばにいられたら、十分だ。
「君のことは俺が守るから……、安心しておやすみ」
最後にそっと世莉の髪を撫でて、俺は部屋を後にした。
出勤用の私服に着替えた俺は、駐車場へと向かった。
まだ時間は朝の五時で、辺りは薄暗い。
誰かを起こさないようにひっそり家を出て庭先に向かうと、前方から誰かがやって来るのが見えた。
世莉専属のお手伝いさんである、敏子さんだった。
彼女とほかの女中は、ここから歩いて五分ほどの場所にある離れに住んでいる。
もうこんな時間に出勤しているのかと驚きながらも、俺は軽く会釈をした。
「まあ、優弦さん。おはようございます」
「おはようございます。早いですね」
「優弦さんこそ」
敏子さんは驚いたように目を見開き、頭を下げた。
彼女とコンタクトを取れたのは、全て井之頭の調査力のおかげだ。
最初に電話をしたときはとても驚いていたけれど、世莉の現状を聞くと二つ返事で力になりたいと言ってくれた。
あのときの世莉が一番求めていたのは、絶対的に信頼できる味方だと思っていたから、敏子さんが来てくれて心底安堵したのを覚えている。
俺はそっと部屋の中に入ると、寝ながら涙を流している彼女の頬をそっと撫でた。
そのまま涙を拭うと、彼女は小さく唸り声を出す。
玉のように美しい白い肌に、涙の跡がいくつもできている。
それを見ただけで、胸が千切れるほど、ぎゅっと苦しくなった。
「世莉、愛してる……」
本心が、口からこぼれ出てしまった。
今まで、一度も口にしたことなどなかったというのに。
切なさと愛しさが複雑に折り重なって、どうしようもなくなる。
ふいに出てしまった告白に、自分自身でも驚いていた。
俺は……世莉を愛している。遺伝子など、関係ないところで、彼女を愛しいと思う。
でも、そのことを今の彼女に伝えることなど、到底できないと思った。
世莉にとって、たとえ俺がどんな人間だろうと、きっと関係ない。
俺が相良家の一族で、跡取りである限り、世莉は俺といればいるほど祖母のことを思い出して、悲しくなるだろう。
そんな状態で、彼女に思いを伝えることは、酷すぎる。だから……この気持ちは一生伝えない。
でも、それでもいい。俺はただ、彼女のそばにいられたら、十分だ。
「君のことは俺が守るから……、安心しておやすみ」
最後にそっと世莉の髪を撫でて、俺は部屋を後にした。
出勤用の私服に着替えた俺は、駐車場へと向かった。
まだ時間は朝の五時で、辺りは薄暗い。
誰かを起こさないようにひっそり家を出て庭先に向かうと、前方から誰かがやって来るのが見えた。
世莉専属のお手伝いさんである、敏子さんだった。
彼女とほかの女中は、ここから歩いて五分ほどの場所にある離れに住んでいる。
もうこんな時間に出勤しているのかと驚きながらも、俺は軽く会釈をした。
「まあ、優弦さん。おはようございます」
「おはようございます。早いですね」
「優弦さんこそ」
敏子さんは驚いたように目を見開き、頭を下げた。
彼女とコンタクトを取れたのは、全て井之頭の調査力のおかげだ。
最初に電話をしたときはとても驚いていたけれど、世莉の現状を聞くと二つ返事で力になりたいと言ってくれた。
あのときの世莉が一番求めていたのは、絶対的に信頼できる味方だと思っていたから、敏子さんが来てくれて心底安堵したのを覚えている。