天敵御曹司は政略妻を滾る本能で愛し貫く
「こっちの要望ばかり伝えてしまったが、君にも権利を与えることが約束されている」
「権利……と言いますと」
予想もしていなかった発言に首を傾げると、寿さんは黄ばんだ古い一枚の紙を取り出して、机の上にそっと置いた。
見出しには、〝番制度に関する契約書〟と書かれている。
一、雪島家に生まれた長女は相良家に嫁がせること
二、嫁いでからは、女中として一定期間働き相良家のしきたりを学ぶこと
上記を約束した場合のみ、雪島家への支援を行う
また、相良家に嫁いだ運命の番(長女)には、奥方として女中を指導する権利を与える
「女中を指導……と申しますと」
「君にはいずれ女中の上に立ってもらい、優弦の手助けをし、相良家を支えてもらう」
具体的に何をすればいいのか分からず、私は難しい顔のまま紙を眺めた。
「相良家主催の催事、伝統行事、諸々君に進行を委ねる。今まで私の妻が行っていたことを、世莉さんにお願いしたい」
なるほど。相良家はとことん浮世離れした家系のようだ。
普通の家ではありえないような行事がたくさんあるのだろう。
まるで、ひとつの会社のように。
「君はただ、全て今まで通りに進行してくれるだけでいい」
「今まで通りに……」
「何か余計な新しいことをしようものなら、権利は取り上げる」
ギラリと目が光り、背筋が凍った。
相良家には、変化という言葉など一切存在しないのだろう。
ただただ、昔の通りに行動し、権力を守っていくことを望んでいるのだ。
女中を束ねる力など全く持って不要だが、私は深々と頭を下げた。
首を垂れながら再びちらりと百合絵さんを見ると、彼女は悔し気に唇を噛みしめて俯いている。
彼女も新参者を受け入れていないことは、ありありと分かった。
「もういいでしょう。世莉さんも初日で疲れているはずだ」
突然、今まで黙っていた優弦さんが、冷たい声で切り出した。
旦那様は「それもそうだな」と渋い声で同意して、百合絵さんに目配せをした。
「では、百合絵。世莉さんを自室に案内してさしあげなさい」
「はい、承知いたしました」
「私と妻は普段向かいの新しい屋敷にいるから頻繁に会うことはないだろう。何かあったら百合絵を頼りなさい」
「ありがとうございます」
お礼を言ってからすっと立ち上がり、私は優弦さんと旦那様を置いて、自分の部屋に向かうこととなった。
「権利……と言いますと」
予想もしていなかった発言に首を傾げると、寿さんは黄ばんだ古い一枚の紙を取り出して、机の上にそっと置いた。
見出しには、〝番制度に関する契約書〟と書かれている。
一、雪島家に生まれた長女は相良家に嫁がせること
二、嫁いでからは、女中として一定期間働き相良家のしきたりを学ぶこと
上記を約束した場合のみ、雪島家への支援を行う
また、相良家に嫁いだ運命の番(長女)には、奥方として女中を指導する権利を与える
「女中を指導……と申しますと」
「君にはいずれ女中の上に立ってもらい、優弦の手助けをし、相良家を支えてもらう」
具体的に何をすればいいのか分からず、私は難しい顔のまま紙を眺めた。
「相良家主催の催事、伝統行事、諸々君に進行を委ねる。今まで私の妻が行っていたことを、世莉さんにお願いしたい」
なるほど。相良家はとことん浮世離れした家系のようだ。
普通の家ではありえないような行事がたくさんあるのだろう。
まるで、ひとつの会社のように。
「君はただ、全て今まで通りに進行してくれるだけでいい」
「今まで通りに……」
「何か余計な新しいことをしようものなら、権利は取り上げる」
ギラリと目が光り、背筋が凍った。
相良家には、変化という言葉など一切存在しないのだろう。
ただただ、昔の通りに行動し、権力を守っていくことを望んでいるのだ。
女中を束ねる力など全く持って不要だが、私は深々と頭を下げた。
首を垂れながら再びちらりと百合絵さんを見ると、彼女は悔し気に唇を噛みしめて俯いている。
彼女も新参者を受け入れていないことは、ありありと分かった。
「もういいでしょう。世莉さんも初日で疲れているはずだ」
突然、今まで黙っていた優弦さんが、冷たい声で切り出した。
旦那様は「それもそうだな」と渋い声で同意して、百合絵さんに目配せをした。
「では、百合絵。世莉さんを自室に案内してさしあげなさい」
「はい、承知いたしました」
「私と妻は普段向かいの新しい屋敷にいるから頻繁に会うことはないだろう。何かあったら百合絵を頼りなさい」
「ありがとうございます」
お礼を言ってからすっと立ち上がり、私は優弦さんと旦那様を置いて、自分の部屋に向かうこととなった。