天敵御曹司は政略妻を滾る本能で愛し貫く
 初めてした彼女とのキスは想像以上に甘く、遺伝子の作用も相まって、意識が飛んでしまいそうなほどだった。
 世莉の全てが欲しい――。そんな独占欲に駆られて、世莉の奥深くに触れたいという感情で溢れてしまった。
 その声も、髪も、体も、もう他の誰にも見せたくない。
 内田医院の跡取りに触られているところを見た時は、我を失うほど怒りの感情に襲われた。このまま強引にでも番って、世莉を自分のものにしてしまいたいと思ったほど。
 そんな自分が恐ろしくて、もう離れた方がいいのかもしれないと考えた矢先に、まさかあんなことを言われるだなんて……。
 全てを委ねてくれる世莉を見て、気かおかしくなりそうなほど、欲情していた。
 大切だから、壊したくない……。
 同時に、そんな恐怖心も芽生えたけれど、世莉はそんな俺の気持ちを吹き飛ばすように、背中に腕を回してくれた。
――優弦さん……、ずっとそばにいてください。
 健気すぎる言葉に、心臓がどうにかなってしまいそうだった。
 その言葉を聞いて、ひとりで生きてきた世莉のそばにいることが、俺にできる唯一のことだと思えた。
 世莉が望んでくれる限り、彼女のそばにいよう。
 そう思いながら、俺は宝物に触れるように、世莉を抱いた。

 カーテンから漏れた眩しい日差しに起こされて、俺は目を開けた。
 昨日は、世莉が寝たのを確認してからひとりで会場に戻り、取引先に挨拶を済ませた。
 と言っても、俺の目的は大石さんに挨拶をすることだけで、他の芸能人や政治家には一切用がなかったけれど。
 声をかけられるがままにテキトーに挨拶を済ませてから、俺は再び世莉がいる部屋へと戻ったのだった。
 相当泣き疲れていたのか、世莉は俺が戻ってきても起きることはなく、着物が皺になる前に部屋着にだけ着替えさせた。
 そして今、目が覚めても横に世莉がいることに、ひどく安堵している。
 彼女の存在を確かめるように頬を指で撫でると、世莉はうっすらと目を開けた。
「あれ……」
「すまない。起こしたか」
「え……、もう朝ですか……?」
 初めはぼーっとしていた世莉だけど、だんだんと今の状況を理解したのか、顔を青ざめさせていく。
 何かを不安に思ったのかバッと布団の中を見て、世莉はすでに寝間着に着替えていることに驚いていた。
「もしかして、優弦さんが……?」
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