全部欲しいのはワガママですか?~恋も仕事も結婚も~
 想定していた返事だったからか、栗山さんはうつむいて下唇をギュッと噛んでいた。
 もし私が身を引いたとしても、魁が自分のほうに振り向く保証はどこにもない。
 恋愛はそんなに単純ではないと、彼女もわかっているのだ。


「勉強会のことは彼に確認しておきます。教えてくれてありがとう」


 私は苦笑いの笑みをたたえ、ちょこんと会釈をして改札方向に立ち去った。


 栗山さんはただ魁が好きだっただけだ、と電車に乗ったあとも考えていた。
 長年思いを寄せていて、告白したのに断られ、その原因が十歳年上の私だと知ればムカつきもするだろう。
 離れるべきだと啖呵を切りたくなる気持ちもわからなくはない。


「ねぇ、地方での勉強会に最近は参加してないって、本当?」


 私が向かった先は自宅ではなく、魁の家だった。
 リビングのソファーに腰をおろすなり、栗山さんから仕入れたばかりの情報を早速尋ねてみると、魁は目を丸くして驚いていた。


「なんでそれ知ってるんだ?」

「教えてくれた人がいるのよ。さっき駅で偶然会ったの」

「誰だよ……。あ、もしかして栗山? 俺にも勉強会のことはしつこく聞いてきてたし……」


 私がコクリとうなずけば、魁はあからさまに顔をしかめて溜め息を吐いた。

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