全部欲しいのはワガママですか?~恋も仕事も結婚も~
「なにか気に障ることを言われなかったか?」

「……言われたかなぁ。でもいいの。気にしてないから」


 アハハと笑い飛ばす私に、魁がふわりと抱きついてきた。


「ごめん」

「魁が謝る必要ないでしょ。ていうか、勉強会はどうして行ってないの?」


 体を離した魁は、バツが悪そうに一瞬目を泳がせた。
 そんなに言いにくいことなのだろうか。


「地方の勉強会は一日じゃ終わらないんだ。何泊かしないといけないから……郁海と会う時間が減る」


 思わず耳を疑った。本当にそれが理由なのか、と。
 だけど魁の表情を見る限り、真面目に言ったのだと思う。


「なにそれ」

「勉強会は絶対参加しなきゃいけないわけじゃないから。大丈夫」

「でも、魁が本当は行きたいのなら、行くべきだよ。ちゃんと自分のことも大事にしてほしい」


 魁が私との時間を大切にしてくれているのは十分わかっている。
 だけど、なにかを犠牲にしているなら、それは違うと思った。
 ほったらかしにされるのは嫌だけれど、彼がやりたいことができないのも嫌だ。


「郁海ならそう言うよな」


 魁はこめかみの辺りを人差し指で搔きながら、まいったというような渋い表情になった。


「無理せずいこう」

「うん。郁海と一緒にいるからダメになったとか言われたくないし。仕事もがんばる」


 魁とはこうしてひとつひとつていねいに話し合っていけたら、たいていのことは解決できそうだ。
 付き合ってから魁の性格をより深く知れたおかげで、彼に対する信頼が一層増した。


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