全部欲しいのはワガママですか?~恋も仕事も結婚も~
「なぜこんなに年上のあなたがいいのか、私にはさっぱりわからないです。どうやって魁をたぶらかしたんですか?!」

「その言い方は……」

「だって普通に考えたら、若い私のほうがいいに決まってます!」


 私もそう思っていた。
 自分の年齢や魁との年の差を承知していたからこそ、彼の胸に飛び込むには勇気が必要だったのだ。


「年齢は関係ない、相手を思う気持ちが大事だって、魁が教えてくれたのよ」

「余裕ですね」


 私の言葉が(しゃく)に障ると言わんばかりに、栗山さんは眉をひそめた。


「郁海さんは確実に魁をダメにしますよ。彼が最近、地方での勉強会に参加していないのはご存知ですか?」

「え、知らない」

「あなたと付き合ってから魁は変わってしまった。前は勉強熱心だったのに。彼を思うなら、身を引いて離れてください!」


 返答をじっと待つ彼女に、私は正面に立って真剣な眼差しを向けた。


「ごめんなさい。それはできない」

「は?!」

「魁が選んでくれたのは私だから。勝手にあなたに譲ることはできないの」

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