全部欲しいのはワガママですか?~恋も仕事も結婚も~
「郁海、よかったら一緒にやらない?」

「え?」

「あ、嫌だったらいいの。無理に誘ったりしない。うちの会社は一応大手だし、辞めるのは勇気がいるってわかってる」


 事業を立ち上げるといっても、必ず成功するとは限らない。
 だからこそ、由華さんは私に声をかけるのをためらっていたのだ。


「一緒にやりたいです。私も今の会社にいても、いつ本社に戻れるかわからないですし……」

「だよね。でも、ほんとにいいの? 私のワガママに付き合っても」

「いっそ思い切って会社組織にしましょうよ。店舗だけじゃなくてあちこちに売り込んでもいいじゃないですか!」


 こんなにあっさり返事をした自分に驚いた。
 今の会社に未練があるかを考えてみたところ、不思議となかったのだ。十五年も勤めているというのに。
 先ほど由華さんが口にした“やりがい”が、今の私にも見つからないからだろう。

 
「移動販売車なんかもいいですよね。美知留ちゃんにも空いた時間に手伝ってもらいましょうよ」

「そうだね! 楽しそう!」


 話せは話すほど夢が広がっていく。
 まずは今後のスケジュールを決めるところからだが、私たちは水を得た魚のように生き生きとしていった。

『何歳からでも、なにをしてもいいじゃん。一度しかない人生なんだし、他人に迷惑をかけないのは当然だけど、自分の好きなことをしようよ』

 初対面で美知留ちゃんに言われた言葉が、今の私たちの心に突き刺さった。


 後日、魁にも報告をした。
 すると彼は「がんばれ! 俺は応援する」と言って、笑顔でギュッと抱きしめてくれた。

 こうして彼はいつも私に元気を注入してくれる。
 やっぱり特別な存在だ。

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