全部欲しいのはワガママですか?~恋も仕事も結婚も~
「佳奈江に連絡してみたの。数年ぶりだったけど、電話をかけた」

「…………」


 母が私に話があるなんて、どう考えても魁との交際についてだろうと想像はついたが、冒頭から魁のお母さんの名前が飛び出したので私はうろたえてしまった。

 魁もお正月に私のことを家族に話したとは聞いている。
 彼のご両親が実際にどんな反応だったのか私にはわからないが、特に反対はされなかったという報告だったのだけれど……。

 
「佳奈江は昔、郁海をかわいがってくれたでしょう? 今もあのころのままだったわ。彼女の声でそう感じた」


 やさしかった魁のお母さんの顔が思い出されて、母の話を聞きながら自然と口元が緩んだ。
 魁の笑顔が癒し系なのは、お母さん似なのかもしれない。
 

「うちの娘が魁くんと交際して、本当に申し訳ないって謝るために電話したのよ。だってそうでしょ。魁くんにはもっと若い女性のほうが似合うはずだもの。なのに、よりにもよって十歳も年上の郁海なんかと付き合って。魁くんの貴重な時間を無駄にさせてるみたいで、親としては心苦しかったから」

「お母さん……」

「でもね、謝らなくていいって笑ってた。魁くんのほうが郁海を好きになって、やっと振り向いてもらえたらしいって」


 どういう伝え方をしたのかまでは魁から聞いていなかったから、それは初耳だ。
 そんなふうに私のことを家族に話していたなんて……。


「最初は魁くんをあきらめようとしたの?」

「怖くてなかなか踏み出せなかった。うまくいかなくなって下手に別れたら、お母さんたちの友情にまで影響しそうで」

「だけど結局恋人同士になったのね」

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