全部欲しいのはワガママですか?~恋も仕事も結婚も~
今日の母はいつもより静かだ。言葉も、表情も。
冷静に話をするためにやってきたのだと、態度に出ている。
「魁を逃したらダメだと思った。ああすればよかった、こうすればもっと幸せだったはずだって、ずっと後悔しながら生きるのは嫌だもの。魁はそういう、特別な存在なの。心から愛してる」
「もう知らないわ。好きにしなさい。今日はそれを言いに来たの」
母が折れてくれた、という意味に捉えていいのだろうか。
まだ信じられなくて、無言で母の顔色をうかがってしまう。
「郁海を自由にしてやれって、お父さんと京香から叱られたわ。だからもう、構うのはやめる」
私を心配し、幸せを願っていたからこそ、母はお見合いを勧めていたのだと理解している。
口うるさいのも、母親の愛情なのだと。
「それにね、佳奈江が郁海なら大歓迎だって言ってくれたの。魁くんには、年上でしっかりしてる郁海が似合ってるって。全然“しっかり”なんてしてないのにね」
「……そのとおり」
「とにかく、佳奈江が郁海を気に入ってるんだから仕方ないわ。あちらが交際に反対してないなら私はなにも言うことはない」
母も昔、礼儀正しくて聡明な魁を気に入っていたし、今になって嫌う理由もない。
今度あらためて母と魁を会わせたい。すっかり大人になった彼を生で見たら、母は驚くだろうな。
冷静に話をするためにやってきたのだと、態度に出ている。
「魁を逃したらダメだと思った。ああすればよかった、こうすればもっと幸せだったはずだって、ずっと後悔しながら生きるのは嫌だもの。魁はそういう、特別な存在なの。心から愛してる」
「もう知らないわ。好きにしなさい。今日はそれを言いに来たの」
母が折れてくれた、という意味に捉えていいのだろうか。
まだ信じられなくて、無言で母の顔色をうかがってしまう。
「郁海を自由にしてやれって、お父さんと京香から叱られたわ。だからもう、構うのはやめる」
私を心配し、幸せを願っていたからこそ、母はお見合いを勧めていたのだと理解している。
口うるさいのも、母親の愛情なのだと。
「それにね、佳奈江が郁海なら大歓迎だって言ってくれたの。魁くんには、年上でしっかりしてる郁海が似合ってるって。全然“しっかり”なんてしてないのにね」
「……そのとおり」
「とにかく、佳奈江が郁海を気に入ってるんだから仕方ないわ。あちらが交際に反対してないなら私はなにも言うことはない」
母も昔、礼儀正しくて聡明な魁を気に入っていたし、今になって嫌う理由もない。
今度あらためて母と魁を会わせたい。すっかり大人になった彼を生で見たら、母は驚くだろうな。