全部欲しいのはワガママですか?~恋も仕事も結婚も~
「あのぅ……あ、やっぱりそうだ。久しぶり! 郁海だろ?」
男があっという間に私の目の前まで来て、声をかけてきた。
なぜ私の名前を知っているのだろう?
壁を背にしていた私は身動きが取れなくて、だんだんと指先が震え出す。
「え、知らないです。離れてください。け、警察を呼びますよっ!」
動揺しながら握りしめていたスマホを操作しようとすると、男は急におろおろとあわてだした。
そりゃ、誰でも警察は呼ばれたくないだろう。
「待って待って! 俺だよ。萩谷 魁。わからないかな? 昔、勉強を教えてくれただろ?」
「…………」
もう少しで110番通報するところだったが、寸でのところでタップする指を止めた。
男が言った名前に聞き覚えがあったからだ。
「魁って……あの魁?」
「だからそうだって」
男があっという間に私の目の前まで来て、声をかけてきた。
なぜ私の名前を知っているのだろう?
壁を背にしていた私は身動きが取れなくて、だんだんと指先が震え出す。
「え、知らないです。離れてください。け、警察を呼びますよっ!」
動揺しながら握りしめていたスマホを操作しようとすると、男は急におろおろとあわてだした。
そりゃ、誰でも警察は呼ばれたくないだろう。
「待って待って! 俺だよ。萩谷 魁。わからないかな? 昔、勉強を教えてくれただろ?」
「…………」
もう少しで110番通報するところだったが、寸でのところでタップする指を止めた。
男が言った名前に聞き覚えがあったからだ。
「魁って……あの魁?」
「だからそうだって」